トップが語る、「いま、伝えたいこと」
予想通り、再選されたトランプ氏は閣僚人事をてきぱきと発表しています。第一次政権の時に、最初の人事が停滞してしまったことから考えると今回は準備が充分にできていたことがよくわかります。トランプ第2期政権がどのようになるのかは、高島康司著『ドナルド・トランプと共和党のRE:アメリカ改革』(VOICE)を読めばアウトラインがつかめるように感じます。トランプ氏は選挙公約として“AGENDA(アジェンダ:計画表)47”を発表していますし、ヘリテージ財団という共和党系のシンクタンクが「プロジェクト2025」という提言を発表していて、トランプ氏自身は否定していますが、これに沿って新政権の運営が行われると言われています。
それはアジェンダで公約されていることが、大体「プロジェクト2025」に書かれていることと対応しているからです。「プロジェクト2025」の全文は英語ですがインターネット上に公開されているので誰でも見ることができますし、翻訳機能を上手く使えば日本語で内容を確認することもできます。ただ、シンプルにわかりやすくまとめていただいている高島先生の本を読めばある程度は理解できるようになっていると思います。アメリカの官僚制度を根本的にひっくり返さなければトランプ氏のやるべきことができないという前提で、官僚制度をいかに破壊していくかということが目玉になっていると私には思えます。
日本では、民主党政権ができたときに当時の実力者であった小沢一郎氏が試みたことに近いと考えてもいいのかなと思います。ただ、小沢氏よりもはるかに徹底的に官僚機構を敵と認識して徹底的にやろうとしていることが当時との大きな違いだと思います。上手くいってアメリカ社会が良くなるようだったら日本も真似をしたらいいのかなとも思います。
トランプ再選が確定して以来、マーケットはいろいろな情報に反応して振れ幅が大きくなっている状態です。東京都区部の物価上昇率が上がったことから日銀が利上げするのではないかと思惑から目先は円高が進んでいます。FRBが利下げを実施することも織り込まれるようになってきたので、このトレンドが1〜2週間ぐらいは続きそうな気もします。最近の比較的強い動きは、日本の株式相場を売り崩そうというある程度大きな力が働いているように感じますが、企業業績などの実態から考えると反対の立場で考える人もいて、いまは綱引き状態になっています。
株式相場が上げるのか下げるのか、為替相場が円高か円安かどちらの方向に動いていくのかがある程度定まるとそちらの方向に動いていきやすくなりますが、どちらにしてもトランプ大統領が就任して、3か月間ぐらいは行ったり来たりする相場になりそうな気がします。実際に「プロジェクト2025」に書いていることをどこまで実施するかも含めて、新政権の本気度を測りながらの相場の動きになると思います。金融的に考えて、気になるのはFRBに対してどのぐらいの圧力をかけるのかということです。それによって、市場がトランプ大統領についていくのか、敵対するようになるのかが決まるような気がします。
目先のことを少し離れて長い目で社会がどうなっていくかを考えて行くにおいては、AI(人工知能)がどのように社会に浸透していくかを考えてみることが適切なアプローチになると思っています。ただ、トランプ大統領以上に読めないので、SF(サイエンスフィクション)の世界でAIがどのように考えられているかによって予想してみるのは面白アプローチだと思っています。そこで、日本SF作家クラブ編『AIとSF』(早川書房)を今回は取り上げてみたいと思います。
本書は22人のSF作家による、AIに関係する短編掲載されたアンソロジー(特定のテーマで選りすぐり、まとめた作品集)本です。
AIが身近となり、各種SNSサービスなどにも搭載されるようになった時代。しかし多くの方は漠然としたイメージしか持っていないのが現状だと思います。様々な形態のAIをテーマに書かれているもので、日本を代表するSFの達人たちの小説として楽しむのはもちろん、現在や未来にどのようなAIが存在し、開発されていくのかをイメージする事も可能であり、その時に当事者となった人間に何が起こるのか等を感じることができます。
様々な医療関係、警察など行政関係等の社会的な貢献を期待されるものから、擬似人間を作り出す、人間の日々の営みそのものに強い影響を及ぼすものまで、幅広い活用法の創造の世界が、ここには広がっています。あくまでフィクションではありますが、想像力豊かな作家の皆さんの手によって描かれたそれは、ある種のリアリティも持ち、同時に大きすぎる変化を感じさせ、恐怖心に近いものを与えてくれるハードなSFが多いのも特徴だと感じます。
個人的に印象に残ったのは亡くなった恋人をAIによって音声のみですが生き返らせる、というものでした。恋人の存在が、どこまで正確であるのか、意思を持っているのか、暴走ではなく予測であったのか。人間とAIの思考は本当に別のものであるのか。最後にはハッピーエンド的に仕上げられている小説でしたが(ネタバレすみません)、作家の問題提起の意図を理解しようとより深く考えていくとゾクリとさせられるものも多くありました。
AIの活用法は日々進化を遂げ、想像もつかなかったものが次々と考案されています。しかしそれは同時に複雑化を招き、より全貌を把握するのが難しくなっていきます。それでも後書きにおいて本書内で出てくるような技術もあっという間に過去の古いものになると示唆されている事は、ある意味では警告に近いものなのかもしれません。なお、続編である『AIとSF2』(早川書房)も出版されているので、面白いと感じた方や、怖いけど未来を覗いてみたいと思われる方は合わせて挑戦していただければと思います。
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |